探究学習(Inquiry Based Learning)の段階

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5 min readJan 9, 2019

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今回は、探究学習(Inquiry Based Learning)について書きます。
文科省も「探究」という言葉を、指導要領や公式の文書でも頻繁に使用しています。また、探究学習は世界でも注目されている学習法です。

(ちなみに、日本の文脈では「アクティブラーニング」という言葉が流行していますが、英語で「Active Learning」という言葉は主流ではありません。「Inquiry Based Learning」が同じ意味合いで使われています。この2つはもちろん定義の仕方によっては同義になり、またそうでなくなります。)

「探究」とは

  1. 物事の意義・本質などをさぐって見きわめようとすること。(デジタル大辞泉)
  2. 物事の真相・価値・在り方などを深く考えて、すじ道をたどって明らかにすること。(大辞林 第三版)

「Inquiry」とは

  1. a seeking or request for truth, information, or knowledge.
  2. an investigation, as into an incident: Congressional inquiry into the bribery charges.
  3. the act of inquiring or of seeking information by questioning; interrogation. (Dictionary.com)

「探究」の1・2と、「Inquiry」の1・2は近しい概念です。
「Inquiry」の3では行動(Act)があります。したがって探究を以下のように捉えることができます。

「探究とは物事の意義・本質を探るため行動すること。」

探究の段階

探究を中心とした授業の際、多くの先生方が以下のようなことに出くわしたことがあるのではないでしょうか。
「学習のテーマや目標はあるが、何をどのように学習していったらいいか分からない。」
「探究しようとしても、生徒たちが答えを最短で受け取ることだけが学習だと思っている。」

私も同じ経験をしましたし、現在も苦戦中です。その時に役立った資料が下の画像です。
探究学習を段階に分け、私の受け持っている生徒はどの位置にいるのか?生徒に対する期待値はどこか?と判断する際に役立ちました。

- Structured Inquiry (左)
「ある1つの探究課題に向かって、生徒みんなが参加し、先生の指導に生徒がついていく」
上の絵を例にすると、プールに入るのが初めての生徒のために、水の入り方を見せて実践させたり、水の中で一緒に歩いたりすることです。その際に指導者のリードが大変重要になります。

- Controlled Inquiry (中央左)
「先生はトピックを選び、生徒が答えを導くためのリソースを先生が特定する」
再度、プールで例えると、生徒がビート版を使ってバタ足をすることです。ビート版もバタ足も指導者が設定します。

- Guided Inquiry (中央右)
「先生がトピックや問を立て、そして生徒が作成物や解決策を出す」
プールだと、先生が「25mを目標に泳ぎましょう」、「誰が一番早くゴールできるかな?」という目標や問を立て、生徒たちが泳ぎ方を工夫したり、息継ぎのタイミングを工夫したりして目標を達成することです。先生が課題を決めますが、その課題解決や目標達成の方法は学習者によります。

- Free Inquiry (右)
「他者が決定した学習成果を用いずに、生徒が自らトピックを選び学習成果を上げる」
プールでは前に向かって泳ぐ生徒もいれば、どれだけ深く潜れるか挑戦する生徒もいれば、さらには飛込を練習する生徒もいます。プールから出て、早く泳ぐためのトレーニング方法を開発する生徒がいてもいいということです。また学際的な学びになれば、「水が汚かったので、水質を調べるプロジェクトを立ち上げ、環境問題に取り組みます!」といって、生徒がプールから上がり図書館に行くこともあり得ます。
「他者からの促進を受けない」と書きましたが、もちろん他者は自分の課題解決のリソースに成りえます。したがって、目標に向かい学習者自身が課題設定を行い、リソースを活用し学習を発展させていくイメージで私は捉えています。

各段階でも、それぞれに細かな段階を作ることができます。また、常にFree Inquiryが探究学習の最終目的地でもないと考えています。
あくまで、先生が扱っている内容や概念、伝えたい事、生徒に期待している事などと、生徒自身の発達段階や学習進度、学問の領域などで見極め使っていけるように工夫する必要があると、自分自身に言い聞かせています。
「学び、行動し、学習成果を得る」という習慣を身に付けて、生涯学習者になってほしいと思い、日々苦戦中です。

参考文献

Trevor MacKenzie、「Bringing Inquiry-Based Learning Into Your Class」、2016年12月、

https://www.edutopia.org/article/bringing-inquiry-based-learning-into-your-class-trevor-mackenzie

文部科学省、「高等学校学習指導要領解説 総合的な探究の時間編」、2018年7月、

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/13/1407196_21.pdf

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